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女性活躍で群を抜くパソナ、南部靖之CEOの「サステナブル発想」とは

  • 2021年10月1日
  • 読了時間: 6分

Forbes JAPANが発表した「最強のサステナブル企業 100」の「女性活躍ランキング」では、パソナグループがトップにランクインした。役員の女性比率は31.4%、管理職の女性比率は51.5%と高水準だ。


CEOの南部靖之は、1976年の創業時から企業理念「社会の問題点を解決する」を掲げ、“サステナブル”という言葉が広まる前から、持続可能な社会の実現を目指してきた。ダイバーシティにおいても、年齢・性別・国籍・障害の有無にかかわらず、誰もが才能を活かせるような環境づくりにいち早く取り組んでいる。


南部の“サステナブル”な考え方はどのように形成され、いかに企業成長につながっているのだろうか。





サステナブルな発想の原点


小学生の時。夢中で絵を描いていた南部少年が夜遅くに帰宅しても、母は怒らなかった。同級生の母たちが「こんな時間まで何をしてたの。絵を描いてたの? 絵では食べれないわよ!」と怒る中、母は絵を10円で買ってくれた。


「僕はその10円で絵の具が買えることよりも、絵を認めてもらえたことの方が嬉しかった。だって、兄の絵は買ってもらえなかったんですよ。兄は数学が得意だったので、絵の替わりに数学の才能を認められていたんですね。その時母は僕に、『靖之は絵が上手いから、絵を描くことをいつまでも忘れてはいけないよ』と言ってくれました。価値観の多様性を教えてくれたのは母でした」


中学生になり、数学の試験で悪い点数を取り、「俺は馬鹿だ!」と嘆いていたときのこと。父が通りかかり、ひと言。「人に迷惑をかけた時にだけ恥じよ」と声をかけた。


この間のたった10秒ほどで、南部少年の“精神”が変わった。


「なるほど、成績が悪いのは僕が勉強していないからであって、人に迷惑をかけた覚えはないから悪いわけではないな、と。次の日の学校でも、向かうところ敵なし。おかげで、勉強ができる者・できない者両方と偏見なく仲良くできた学校生活でした」


南部の発想の原点には、こうした両親の教育があった。


「文化活動をする人、スポーツ選手、経営者など、いろんな人がバランス良く存在するのが社会。企業も社会と同じバランスを守るべきです。それが、経営者の“おごり”によって、企業利益だけに走ってしまうことがあります。頭だけで考えずに、頭と心のバランスを取ることが重要なのです」


経営の軸となる2つのキーワード


創業時には、父から「利益と社会貢献を両輪にして、前に進みなさい」という言葉をもらった。南部はこの言葉を胸に、創業当時から利益を追い求めるだけでなく「社会全体に貢献する」という姿勢を貫いている。


それは、パソナの「社会の問題点を解決する」という理念にも現れている。「創業当時は周りの経営者から『こんな理念聞いたことがない』『ボランティア組織?』などと揶揄されましたが……。欧米では基本的な道徳とされている“ノブレスオブリージュ”(社会的地位を持つ者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある、という意)と同様の考え方です」


そんな南部が何度も口にするのが「ロングセラー」と「三方良し」。この2つのキーワードが、パソナのサステナブル経営の軸になっている。


「ロングセラー」とは、短期間で高い売上をあげる“ベストセラー”な企業ではなく、50年も100年も社会から必要とされ続ける企業のこと。「三方良し」は “売り手・買い手・世間、すべてに貢献できてこそ良い商売だ“という、いわずと知れた近江商人の経営哲学だ。


これらを実践するために南部は、「経営幹部のバランス」を重視してきた。若いころに重視したのは、年齢的なバランス。「当時は、若さゆえに暴走してしまわないように、定年退職者など年齢の高い方を積極的に迎え入れていました。役員会のメンバーは40〜55歳の方が多かったですね」


近年は、経済人と文化人のバランスを重視するようになった。役員の半分は、行政や大学など文化・芸術分野の出身者とし、もう半分は実業経験のある者とした。「役員会の力は、二分化する必要があると考えています。経済人は数字を追い求めますが、文化人は国家を論じますよね。様々な視点に立って考えられるからこそ、ロングセラーな経営ができるのです」


そしてもちろん、男女のバランスも意識する。「家に帰ったら、奥さんも子どもいるのに、なんで会社は男ばっかりなのだろう、と思うのです。若者も高齢者もいて、男もいれば女もいる、といった職場環境にすべきです」。特に役員会においては、女性が男性にありがちな“イケイケドンドン”な姿勢を引き締める役割を担うことも多く、重要な存在になっている。



「考え」を仕組みに落とす


こうした「ロングセラー」や「三方良し」をベースにした南部の考えは、経営幹部だけでなく、「制度」をつくることで従業員に対しても落とし込まれている。


今回ランクインした「女性活躍推進」に関するデータを見ると、女性従業員の出産後の復職率が100%、子どものいる女性従業員の割合が33.6%と高水準だ。厚生労働省からも、女性活躍に関する状況が優良な企業として「えるぼし」の最高位認定を受けている。


南部は、「社会状況に合わせて働き方が変わるのは当たり前」として、「仕事と家庭の両立支援」につながる様々な制度をいち早く整えてきた。1997年から勤務時間の短縮や地域を限定して勤務できる制度を導入、2010年には事業所内保育所を開設するなど、仕事をしながら安心して子供を育てられる環境を整備した。



パソナファミリー保育園


ほかにも、ユニークな福利厚生制度が多数存在する。そのひとつが「マイ・ケア・デイ」。年1回の健康診断受診日を、心身ともにリフレッシュし、家族・子どもの健康もともに考える日、としているのだ。また、夢の実現に向けてチャンスをひろげる休職制度「ドリカム休職制度」もつくった。


「ワークライフバランスという言葉がありますが、企業経営においては、それに“社会”を付けた“ソーシャルライフワークバランス”が大切です。ワークもライフも個人的なこと。企業にとっては“社会”と“個人”とのバランスが大切なわけです。例えば、受験生の子どもを持つ親が『今年は家で子どもに寄り添いたい』と考えたときに、『専業主婦にならなければいけない』などといった固定概念にとらわれずに働ける、つまり“ソーシャルライフワークバランス”を実現できる環境を作ることが重要です」


「最強のサステナブル企業」を担うのは従業員



南部のようにサステナブルが染み付いたトップが率いるとしても、「サステナブル経営」を推進するためには従業員の理解も不可欠だ。


パソナグループは、連結で2万人以上の従業員数を擁する巨大企業。南部は自社を「正々堂々」という四字熟語になぞらえる。正々堂々の語源は、孫氏の『兵法』の一節「正正の旗、堂堂の陣」。大義名分という正々の御旗が立てれば、堂々とした陣営が組める、という考えだ。


南部はこうした組織をつくるために、リーダーとして「皆に分かりやすい言葉で伝えること」ことを特に意識しているという。


「まずは、ロングセラーや三方良しといった僕が大切にしている考えを、トップメッセージとして社内外で発信します。その姿を見た従業員は、考えを理解し、当社の従業員としての“心構え”を形成します。そして、その“心構え”が彼ら・彼女らの行動になり、最終的に企業の社格になるのです」


南部が幼少期から培ってきたサステナブルな考え方や、創業時から貫いている理念「社会の問題点を解決する」。これらを従業員が一丸となって推進することで、パソナグループのより大きな成長力につなげていく。

 
 
 

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